アスリートの装備 – 奥宮俊祐

プロトレイルランナーとして2015年に独立し、同年に日本山岳耐久レース(通称ハセツネ)で優勝。奥宮俊祐は、自身が代表を務めるFunTrailsを通じてトレイルランニングの普及や日本国内のレースプロデュースに携わりながら、選手としても国内外のレースに飛び回っている。今回、10月にレユニオン島で行われる100マイルレース、GRAND RAID Réunionに向けてトレーニングに励む奥宮に、トレイルランニングとの関わり、トレーニングで使用する装備について話を聞いた。

2017 年 9 月 20 日
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トレイルランニングとの出会い

元々走るのが好きで、大学まで陸上競技をしていました。箱根駅伝に出たくて、ハーフマラソンや 3000m 障害に取り組んでいましたが、結局駅伝には出られませんでした。当時は不整脈があり、走り続けている限りは問題ないのですが、インターバルトレーニングをすると緩走期に苦しくなり、2本目以降タイムがガクッと落ちるような状態でした。周囲からは「たれのみや」と呼ばれ「気持ちが弱いんだ」と叱咤され、一時は走るのが嫌になり、大学を出る時には「二度と走らない」と思うまでになりました。

26歳の時に不整脈の原因がわかったので、手術することにしました。その少し前に自衛隊に入り、再び走り始めてはいたのですが、術後にインターバルをやったら不整脈が起こらずとても楽しく走れ、再び走るのが大好きになりました。トラウマがリセットされた感じです。

ある時登山駅伝に出たら、山間部を通過する区間を担当していた先輩が遅くて、文句を言ったら「それじゃあ、お前走れ」と。それが意外に速く走れたので、「じゃあ、ハセツネ(日本山岳耐久レース)に出てみろ」と。そんな流れで、2005年に第13回ハセツネ(総合3位)に出たのが最初のトレイルランニングです。

Funtrails

その後、自衛隊を退職してから5年間、会社員として働きながら多くのレースに出場しました。会社からは走ることを理解してもらい、非常に恵まれた環境だったのですが、本腰を入れてトレイルランニングに携わりたいと思い、2015年にFuntrailsとして独立しました。

妻には「赤字になったら即撤退」と言われましたが、初年度をなんとか黒字で終え、家族でスキー旅行に行けたのは感動的でした。業務はセミナー、レースの開催、レースのプロデュースですが、少しずつ軌道に乗ってきており、今年もなんとかスキー旅行に行けそうです。Funtrailsを成長させて「トレランで食っていきたい」という若者を採用できるようにしたいと思っています。

Funtrailsが主催する大会もより良いものにしていきたいと考えています。今まで選手として参加した大会の中で一番楽しかった大会は、アメリカ・カリフォルニア州で開催されるウエスタンステイツ・エンデュランスランなのですが、コース設定が良く、なによりエイドがそれぞれ個性的で、レースが盛り上がりました。各エイドに「ハロウィン」とか「ジェイソン」とか色々なテーマがあって。ああいう楽しいレースにしていきたいです。

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トレーニング

普段のトレーニングは、山が遠いこともありロードとトレイルの比率が7:3くらいです。月間でだいたい400~500kmで、最近は走らない日もあります。子供が3人いるので、家族との時間も必要ですからね。大きなレースの後は数日休みますし、先日のEiger Ultra Trail後は一週間走りませんでした。筋トレはインナーマッスルを鍛えることはありますが、それ以外はほとんどしません。

ランニングフォームも重視しています。怪我や故障が少ないのがランナーとしての強みなのですが、大腿骨の疲労骨折を経験し、トレーナーの指導のもとランニングフォームの改善に取り組みました。改善後は身体への負担が減り、今では故障はほとんどありません。シューズのソールも、減り方が全然違います。

大きなレースの前には特殊なトレーニングをする場合もあります。今回はGRAND RAIDの前に一度100マイルの練習をしておきたかったので、北アルプスでこれを想定したルート(総距離150km、累計標高差9000m)を設定しました。松本市内から徳本峠を越えて上高地に入り、水晶、赤牛を経由して船窪岳から折り返すもので、途中ロストもあり約41時間かかりました。

とはいえ、レース直前は身体を休めます。以前は勝ちたいという意識が先行し、レースの2週間前に追い込んでしまい、大会で結果が出せないこともありました。レース中も周りにつられず自分のペースで走れた時に成果が出せているので、意識し過ぎないように気を付けています。

日帰りトレーニングでの装備

装備を選ぶときに大事にしているのは、走りやすいこと、機能的であること、そしてカッコいいことです。確かな装備を選ぶことでストレス無く走れますし、レースにも集中できます。

以下は、北アルプスでの日帰りトレーニングを想定した装備です。夜を跨ぐ場合は防寒着を持っていきます。またサプリ以外に行動食を持参したり、小屋で食事をすることもあります。ここに無いもので「欠かせないもの」は、入山前のみそ汁、お餅とお醤油ですね。塩分、アミノ酸、炭水化物がバランス良く摂れます。大会ではルーティンとしてスタート3時間前までに食べ終えるようにしています。

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1. サプリメント・ VESPA HYPER:レース中は2時間に1回のペースで補給。

2. サプリメント・サカナのちから:アミノ酸を素早く補給します。

3. サプリメント・塩熱サプリ:レース中は30分に1回のペースで補給するため、必要な量はレース時間 x 2。補給のタイミングは腕時計のアラーム機能で管理します。

4. エマージェンシーブランケット・SOL:非常用に携行します。

5. ソフトカップ:流水を汲むときに。レースでは必携品となることも。

6. 腕時計・ガーミン:GPSログの記録、心拍数の計測、オプションパーツを用いたランニングフォームの確認等、多機能に使用できるガーミン社製腕時計。

7. NAO+ ヘッドランプ:行動時間によりますが、照射時間はリアクティブ、コンスタントモード共に10時間、プロファイルは「トレイルランニング」に設定して使用しています。レース中のスイッチ操作が不要なため、ストレスなく走ることに集中できます。霧の時はハンドライトは使用せず、ヘッドランプを手持ちに切り替えています。また必要な時は予備電池も携行します。

8. シロッコ ヘルメットトレイル上に岩稜帯がある場合に携行します。とにかく軽量で、フィット感も良いので、かぶっていることを忘れるくらいです。

9. イーライト ヘッドランプ:非常用に携行するほか、メインランプの電池交換時にも使用します。軽くてコンパクトなだけでなく、最低限の明るさも備えているので、レースの予備用ランプとしても活躍します。

10. シューズ・アディダス TERREX:衝撃吸収と反発のバランスがよく、グリップ力が驚くほど高くできています。岩稜帯の比率が多い場合はこのシューズを使用しています。

11. ハイドレーションシステム・プラティパス:ボトルを前方に付けるのは、素早く補給したり、残量を確認できたりするメリットがありますが、揺れが気になるので、これを背面にセットすることが多いです。

12. テープ・ニューハレ:膝、肩等のサポートに使用します。

13. ベースレイヤー・アディダス TERREX:動きをサポートする着圧アンダー。

14. Tシャツ・アディダス TERREX:ウール x ポリエステル混紡のTシャツは、速乾性にも優れ、濡れても暖かい。

15. サングラス・アディダス TERREX:ものがくっきり見える。細かなサイズ調節が可能で、ランニング中もズレない。

16. ショートパンツ・アディダス TERREX:撥水性、透湿性に優れ、何よりも軽量。

17. バックパック・アディダス TERREX:フィット感に優れ、細かなサイズ調節が可能。

18. 雨具・アディダス TERREX:3レイヤーのレインジャケットは、軽量でコンパクトに収納可能。

19. ミドルレイヤー・アディダス TERREX:これ1枚で吸汗、発散、防風までをこなしてくれる。