ロープレスキュー: 『アサップ』を使用した救助者が付き添う下降

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事故によりハーネスを装着した作業者が、意識のない状態や負傷により動けない状態で吊り下げられるという状況はとても危険で、迅速に対応する必要があります。現場の作業者が通常の装備を使用して直ちに救助にあたることが求められます。

警告

  • • この技術情報を参照する前に、関連する製品の取扱説明書をよく読んでください。ここにある補足情報を理解するには、まず取扱説明書に掲載されている情報を読み、理解する必要があります
  • • ここで紹介する技術を身に付けるためには適切なトレーニングが必要です。ここで紹介する技術を実践する前に必ず、1人で安全に行う能力があることを上級者に確認してください
  • • ユーザーの活動に関連した技術例も紹介しています。ここに紹介されていない方法もあります

 
ここで想定しているのは、要救助者が動けない状態で吊り下げられている緊急の事態で、本来1人用の個人用保護具で2人以上のビレイやバックアップを行う必要のある特殊なレスキューです。作業者は、この種のレスキューについて、トレーニングを積んでいる必要があります。

通常最も効率的な手段は下方に救出する方法です。救助者は自分と要救助者を連結してから要救助者のロープやランヤード等を解除し、要救助者を伴って下降します。下降は、1つの下降器でコントロールします。詳しくは、『アイディ』および『リグ』の取扱説明書等をご参照ください。

最初に発生した事故により、ロープがダメージを負っている等の理由で下降用のロープが破断した場合、救助者と要救助者の2人の墜落は、1つのバックアップシステムにより止められることになります。その際、ロープ、『アサップ』およびエネルギーアブソーバーは、使用の限界に近い荷重を受けます。必要な対策について、以下をご参照ください。

ここに記載されている内容は、レスキュー技術の訓練のために使用するものではありません。

ここでは、ペツル製品の性能と限界が検証されているに過ぎません。

1) 予めセットされているロープを使用し、『アサップ』1つを使用したレスキュー


2本のロープを用いてレスキューを行う場合、1本は下降用、もう1本はバックアップ用となります。

1つのエネルギーアブソーバーが使用されます。

1つのエネルギーアブソーバーを使用して救助者が要救助者を伴って2人で下降する場合は、『アブソービカ』 (L57) または『アサップソーバー アクセス』を使用してください。

これらのエネルギーアブソーバーは、ロープにダメージを与えずに1つの『アサップ』で2人 (250 kg) までの墜落を止めることができます。

救助者が要救助者を伴って2人で下降するために、『アサップソーバー』 20 cm または『アサップソーバー』 40 cm を使用しないでください:

試験により、『アサップソーバー』 20 cm および『アサップソーバー』 40 cm は、このような使用に耐えうるだけの衝撃吸収力を持っていないことが確認されています。

墜落を止める際には非常に大きな衝撃荷重が生じます: 試験では、ロープの外皮が裂け、芯の撚糸が数本破断しました。

試験において、ロープの完全な破断は起きませんでしたが、芯の撚糸が数本しか残っていないロープでレスキュー作業を行うのは非現実的です。
留意点: それぞれのデザインに適用される基準により、エネルギーアブソーバーはそれぞれ異なる衝撃吸収力を備えています。エネルギーアブソーバーの通常の用途は、一定の墜落距離での1人のフォールアレストです。レスキューおよび2人の墜落は、この範囲を大きく超えます。

試験は『アサップ』および『アサップロック』を支点から 1 m の距離にセットして行いました。ハーネスを装着した試験用ダミーを、『アサップ』に対して異なる高さから墜落させました。

アサップソーバー 20 cm / 40 cm

国際バージョン

欧州バージョン

アブソービカ L57

試験は直径 11 mm のセミスタティックロープで行いました。

アサップソーバー アクセス

試験は直径 10 ~ 12.5 mm のロープで行いました。

『クラブ』『パラレル』『アクシス』『ベクター』『レイ』

支点からの距離とロープによる衝撃吸収能力に関する試験

試験では、支点から 3 m の距離で行われた場合と他の場合とでは、ほとんど同じ結果が得られました。

アサップソーバー 20 / 40 cm

備考:

荷重制限

EN 1891 適合のセミスタティックロープにセットされた『アサップ』 + 『アブソービカ』 (L57) または『アサップ』 + 『アサップソーバー アクセス』の組み合わせでひと2人をバックアップする方法は、レスキュー時に限り 250 kg の荷重まで認められます。

250 kg を超える場合は、他の方法でレスキューを行ってください。

クリアランス

『アサップ』 + 『アブソービカ』 (L57) または『アサップ』 + 『アサップソーバー アクセス』を使用してひと2人の墜落を停止する場合、エネルギーアブソーバーの伸びは1人の場合と比べて大きくなります。

この場合: クリアランス = 5 m + ロープの伸び

一般注意事項

作業前および作業中に、墜落や衝撃荷重の生じるリスク (セットされているロープの状態、支点破断のリスク、振り子動作、下降のコントロールがスムーズではない、急なテンション) ができる限り抑えられていることを確認してください。

2) もう1本のロープを使用し、『アサップ』2つを使用したレスキュー


1本の作業用ロープと2本のバックアップ用ロープを使用することができる場合、それぞれのバックアップロープに『アサップ』とエネルギーアブソーバーをセットして使用することを推奨します。

この技術には、『アサップソーバー』および『アブソービカ』 (L57) 、『アサップソーバー アクセス』を使用することができます。