『アサップ』を使用したライフラインの設置

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警告

  • 以下の補足情報を読む前に取扱説明書をよく読んでください
  • ここで紹介する技術を使用する前に、取扱説明書の内容を十分に理解する必要があります
  • これらの技術を身に付けるためには、トレーニングが必要です
  • これらの技術を自身で実践する前に、使用方法を熟知していて責任能力のある人に相談してください

ライフラインの設置は危険な作業です。特に墜落した時に振り子の状態になる可能性が高いため危険です。

このような作業で『アサップ』を使用することにはいくつかのメリットがありますが、特別な注意点もあります:

  • 移動中に両手が自由になる
  • 『アサップ』の中でロープがスライドするため、結び目をつくる際に素早くロープを出すことができ、また移動中にロープを適度に張った状態を保つことが可能
  • 振り子の状態での墜落を『アサップ』で止める場合は、クリアランスの計算が難しくなります。単純にロープを結んだ状態で振り子になる場合よりもクリアランスは大きくなります。
    クリアランスを構成する要素は以下の通りです:
    – 最終アンカーから出ているロープの長さとその伸び
    – エネルギーアブソーバーの伸長
    – 『アサップ』がロックするまでの距離。振り子の場合、『アサップ』にすぐに荷重がかからないため、自由落下する場合よりも長くなる可能性があります
  • 墜落後に『アサップ』で吊り下がっている場合、自己脱出用/救出用のシステムを設置する必要があります。

注意:

– 『アサップ』のロープを常に張った状態にして、たるみができないようにしてください。
結び目をつくる際には、ロープをたるませる必要があります。この時、『アサップ』の機能は無効になっていると考えなければなりません。作業者は代わりのシステムをセットする必要があります(例: アンカーにランヤードで自己確保を取る)
– 常にアンカーよりも低い位置で作業してください
– 可能な限り、高い位置にバックアップシステムをセットして振り子による危険を抑えるようにしてください
– 作業者は事前に必ずリスク評価を行わなければなりません。アンカー間の距離と振り子の状態になるリスクについては必ず言及し、必要となるクリアランスを算出する必要があります

1. 墜落するリスクが低い状況での設置方法の例

移動:
青色のロープをライフラインとしてセットしていきます。『アサップ』の中でロープがスライドするのでたるみができません。アンカーにロープをセットする:
作業者はアンカーにランヤードで自己確保を取ります。『アサップ』の上側にロープを出して結び目をつくり、アンカーにセットします。『アサップ』はそのまま次の区間の移動で使えます。

  • 1人で作業ができる
  • アンカー間の距離が短く、墜落するリスクが低い状況での作業に限られる

2. 別の作業者によるビレイを使用した設置の例

移動:
青色のロープをライフラインとしてセットしていきます。『アサップ』の中でロープがスライドするのでたるみができません。アンカーの位置にいる作業者がグレーのロープでビレイをします。アンカーにロープをセットする:
作業者はアンカーにランヤードで自己確保を取ります。グレーのロープでビレイされている状態を保ちます。『アサップ』の上側にロープを出して結び目をつくり、アンカーにセットします。『アサップ』はそのまま次の区間の移動で使えます。

  • 両手が自由な状態で速やかに移動することができる
  • 作業者を補助するためのシステムがある
  • アンカーを通過する際に複数のロープを操作しなければならない

3. 振り子の状態での落下テスト

100 kg のおもりを使用。『アサップソーバー 40』と『アサップ』を未使用の『アクシス 11 mm』にセットし、アンカーに8の字結びで固定。
落下前の状態: アンカーから『アサップ』の距離を 3 m にして、おもりをアンカーから水平方向に 3 m 離れた位置にセットします(『アサップソーバー』とカラビナ2個の長さがあるので、多少のたるみができます)。
同じ条件で3回落下させます。


結果の主な内容:
『アサップ』がロックするまでの距離: 21 ~ 32 cm
『アサップソーバー 40』は完全に伸びきりました。
ロープは異常なし。『アサップ』は要廃棄。
おもりはアンカーから 4.3 m 下の位置で止められました(クリアランスを算出するためには、作業者の身長と安全マージンを足す必要があります)。
振り子の運動により、おもりはアンカーから水平方向に 3.5 m 離れた位置まで到達しました。

このテストは、平均値をとるために複数回実施されましたが、この結果はあくまでも参考情報です。

『アサップソーバー 40』を使用する場合は、アンカー間の距離の最大許容値は 3 m と考えることができます。リスク評価をする際は、実際の現場の状況を考慮した上で、この情報を参考にしてください。