ペツル ロープトリップ 2018 – デュイスブルク

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2年おきに開催されるペツル ロープトリップには、世界中からロープアクセスのプロフェッショナルが集ってきます。この国際的な競技とシンポジウムは、世界中の技術者が集い、競い合い、アイディアと技術を共有し、フィールドに精通した専門家から学ぶ、またとない機会になっています。

2年に一度開催されるロープアクセス競技とシンポジウムに参加するため、各地域レベルのロープトリップ優勝チームを含む、40のチームが一堂に会しました。デュイスブルクの素晴らしい会場「Landschaft Park」のおかげで、このイベントは忘れられないものとなるはずです。1901年から1985年までの間、この場所は製鋼所として、操業停止までに3,700万トンを超える鉄を製造してきました。現在、この元製鋼所は自然に囲まれた公園として、再利用されています。このユニークな遺構には、ロープトリップにおける挑戦の対象となる障害物が用意されています。今回のロープトリップでは、4つの予選課題があり、そこから上位チームが準決勝に進み、さらにその次に決勝の課題があります。2018年の競技で新しいのは、準決勝に進出するためにチームとして課題に挑戦するだけでなく、チームの個々のメンバーがそれぞれ課題に取り組む必要がある点です。

予選最初の課題はロープトリップのクラシック課題ともいえる「水バケツ」です。挑戦者は水の入ったバケツを運びながら、複雑なコースを進みます。コースを通過する速さと通過後にバケツに残っている水の量との総合点で採点されます。スピードと安定感のバランスが鍵となります。

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水バケツを終えると、競技者は使われなくなった「Möllerbunker」(コークスと鉄鉱石を保管する場所) へ移動し、「炭鉱」と名付けた課題に挑戦します。引き上げ技術とその正確性が試されるこの競技では、競技者は輸送用の容器に資材を積み、ロープを使用したシステムを通して運搬し (容器をひっくり返すことなくベルを鳴らした場合はボーナスポイントが付与される)、中身を貯蔵庫へ移します。個人で行う最後の課題は、以前クレーンとして使われていた「Krokodile」にて行われ、これは純粋にロープを移動する競技です。競技者はロープからロープへと渡り、下降する直前に貯蔵タンクの上を越える必要があります。

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そこからお楽しみのチーム戦が始まります。地上はるか高くにぶら下がった状態でのビリヤードゲームは誰もが楽しんだことでしょう。通常のビリヤードのように、目的はキューを使って「球」を打ってポケットに落とすことです。残念ながら地に足をつけることはできず、プレイヤーがテーブルを揺すってその下に吊り下がっている鐘を鳴らしてしまうと、減点となります。

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素晴らしい環境でのほぼ完ぺきな一日 (中には雨の中果敢に競技した者もいましたが) の後、ロープトリップのもう1つのイベントであるシンポジウムのために、全てのチームが一同に会しました。

シンポジウムは競技者にとって、リラックスしながら情報を共有する機会となりました。初日の晩には、スピーカーとして集中治療、緊急医療救護のスペシャリストの医学博士 Jutta Gabe、スポーツ科学部 (リヨン) 助教授 Isabelle Rogowski、ドイツ職業保険組合職員 Ronald Tesk、工学博士 Marco Einshaus、GeoArc 社より Chris Robbins、Max Dugal らが講演を行いました。これらの有識者がそれぞれのテーマに沿った講習を行いました:緊急医療、ロープアクセス作業者の怪我および仕事環境、ロープアクセスの分野における保険の課題とソリューション、よくある事故の要因と原因、活火山の研究における固有の課題と状況に関するプレゼンテーション。

ロープトリップの2日目には、予選ラウンドが引き続き行われ、ワークショップとシンポジウムの開催、そして最も重要な「登高レース」が行われました。ロープトリップでは定番の「登高レース」は、ロープアクセス作業者のスピードを試す典型的な課題です。競技は単純です。競技者はロープを登り、上でベルを鳴らした後、下降モードに切り替え (下降用ロープに下降器を取り付け、各種アッセンダーを取り外します)、モバイルフォールアレスター『アサップ』がロックしないようにしながら地面まで下降します。

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勝敗は最後までわかりません。ペツルロープトリップが始まって以来、競技はフランスとロシアのチームによって上位が独占され、今回もそれは変わりませんでした。最初はフランスの Antoine がわずかに先を行っていましたが、下降中にバックアップ器具がロックしてしまい、彼がそれをリセットする一瞬の隙に、Dimitriy が追い抜き勝利を手にしました。

女子の部では、ブラジルの Cintia Gobo が連勝街道を進み (彼女は南米版ペツルロープトリップでも優勝しました)、新たな勝利を手にしました。

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ロープトリップ最終日は興奮に満ちていました。予選ラウンドを終えた時点で、ペツルの熟練講師により引上げシステムおよび長いセミスタティックロープを使用する際に特有の課題について、ワークショップが行われました。正午までに予選ラウンドが終わり、カナダ、フランス、ロシア (2チーム)のファイナリストが発表されました。

これらのチームは、チーム全員でのレスキュー課題のために風車のある場所へ移動しました。大きさの異なる「要救助者」が異なる器具に吊り下がっているため、救助には様々な技術が必要とされます。

準決勝第一試合を戦った両方のチームが課題に失敗したため、第二試合の2チーム、カナダの RAT とロシアの JEDI による戦いが事実上の決勝となりました。両チームとも技術に優れ、ロープを駆け上りましたが、最終的に先に全ての要救助者を地面に下ろしたのはカナダのチームでした。

決勝進出者によるお祝いのビリヤードゲームの後、イベントは解散となり、食事が提供され、バンドによる演奏、DJ LaFouche による選曲が行われました。

素晴らしいイベントを創り上げた、全ての競技者、ゲストスピーカー、講師、参加者の皆様に、心より感謝申し上げます。そして、2020 年にまたお会いしましょう。

最終順位

優勝 RAT – カナダ
準優勝 JEDI – ロシア
準優勝 EVPATOR MOSCOW – ロシア
準優勝 ASTRO – フランス
5位 MCT – ロシア / ウクライナ
6位 HYDROKARST – フランス
7位 CLIMB PARTNER – ポーランド
8位 COLIBRIS – フランス
9位 THE ARBORISTES – スイス
10位 PULSE – フランス
11位 AXIS – ブラジル
12位 ALPINCOR -スペイン
13位 HAPPY ROPEBOYS – スウェーデン
14位 CLIMBING SERVICE – ポーランド
15位 LEVEL 9 – ポーランド
16位 RATBOC – ポーランド
17位 ALPININDUSTRY
18位 HOEHENWERKSTATT
19位 TRAINER KOLLEKTIV -ドイツ
20位 3TREE – イタリア
21位 TEAM VERTIC 2 – スイス
22位 ROPE ACCESS – ルーマニア
23位 SPELAION – ブラジル
24位 HEIGHT SAFETY EXPERT – ベルギー
25位 SIMA VERTICAL – スペイン
26位 SECRET BREED -シンガポール
27位 TEAM VERTIC 1 – スイス
28位 ROCKI – ドイツ
29位 JPJC – スペイン
30位 TRANGO – ポーランド
31位 TEAM DUSSELDORF – ドイツ
32位 FINGER – FINLAND/ドイツ
33位 BELAY ROPE ACCESS LTD – イギリス
34位 TAIWAN IRON MAN ADVENTURE – 台湾
35位 INDOROPE – インドネシア
36位 FINROPE – フィンランド
37位 TAIWAN IRON MAN OUTDOOR – 台湾
38位 TEAM VANDERNET – フィンランド
39位 SKYMAN – 台湾
40位 YES MA’AM – カナダ