ロープアクセス技術者になるためのトレーニング

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ルイーズ、ルーシー、ミリアムの3人は、ロープアクセス技術者になるためのトレーニングを受講しています。男性の仕事だと言う人もいますが、彼女たちはそうではないことを示そうとしています。ロープアクセス資格証明書 (米国の SPRAT に相当) の取得を目指し、フランスのラ・ボーム=ドスタンで開催されているトレーニングに参加する3人の姿を追いました。

newsfr_photo1_cordistesaufemininAtout Corde 社が提供するロープアクセストレーニング受講の第一歩

「『リグ』を渡して!」ルイーズは、トレーニング参加者の1人に向かって言います。「『アサップ』はセットした?」ルーシーが確認します。ロープアクセス技術者の会話を理解するには、通訳が要るほどです。下降器やモバイルフォールアレスターのモデル名を意味する『リグ』や『アサップ』、特殊な技術等の専門用語が飛び交う高所作業は、一朝一夕でできるものではありません。
ロープアクセス技術者は訓練が必要な職業で、フランスでは異なるレベルにおいて、ロープアクセス資格認定コースが用意されています。初級レベルは業務経験が無く、またクライミングや山岳スポーツの資格を持っていなくても、身体的・精神的に健康であれば受講できますが、高所での経験があるとより良いでしょう。

newsfr_photo3_cordistesaufemininロープアクセストレーニング中の3人のアクロバット

高所に慣れているルイーズは、サーカスのパフォーマーであり、シルク・ドゥ・ソレイユのような一流の会社で飛び手として働いていた経験があります。「父が山岳ガイドをしていて、私はクライミングが大好きなんです」とルイーズは言います。
「飛び手として、私は地上より高いところで多くの時間を過ごすので、用具の使用方法について、ロープアクセス作業やその他のスキルを含め、知識を深めたいと思いました」
「職業上、これは私の弓に弦をもう一本加えるようなものです」とルイーズは付け加えます。ロープアクセスが男性特有の職業であるというのは、もはや現実からかけ離れています。ルイーズやルーシーのように、ロープアクセスのプロフェッショナルになることを目標に、ロープアクセスのトレーニングを受講する若い女性が増えています。
ルーシーの場合もそうです。パリ出身の彼女は、冬の間フレンチアルプスにあるスキーリゾート、シュペルデヴォリュイで働いています。夏の間は樹木医である兄と共に樹林の中で働いています。「ロープアクセス技術者になることは、必然的な次のステップです」とルーシーは言います。
「私はマーケティングとコミュニケーションの仕事をしていますが、屋外での仕事の方がずっと好きです。だからこそ、思い切ってロープアクセスの資格を取得することにしたのです」

newsfr_photo5_cordistesaufemininデモンストレーションを行う Atout Corde 社のインストラクター、エルベ

今回は、ロープアクセストレーニングの提供を専門とする Atout Corde 社により5週間のレーニングが開催されました。「5週間はとても短い」複数のトレーニングモジュールを通して知識を伝える役割を担っている講師のエルベはそう言います。
最初のモジュールでは、建設現場や岩壁で使用される用具 (アンカー、ライフラインや作業場の設置) について学びます。2番目のモジュールは、都市部や工業地帯で使用される技術を扱います。そして、3つ目の重要なモジュールでは、ロープアクセスを用いた救助技術と高荷重の引き上げ訓練をします。

newsfr_photo4_cordistesaufemininロープアクセス資格証明書取得のための課題に取り組む受講生たち

最後に、2つの短いモジュールが、現場での救助と PPE の点検に充てられます。5週間のプログラムですが、内容はかなり濃いものになっています。受講生たちは、岩壁、工業地帯を含む様々な作業現場に日々赴きます。
この日のプログラムは、理論的には「アクセスできない」高所へのアクセスをシミュレーションするために、それぞれ水平と斜めに2本のロープを張り、交差させるというものでした。この作業は、ミリアムにとっては公園を散歩するようなもので、ロープを横断している間に少し楽しむ余裕がありました。

newsfr_photo6_cordistesaufemininトレーニング中のひとコマ

ミリアムは、プロのパフォーマーとしても活動しており、サーカスや独立会社でのエアリアル・パフォーマンスを得意としています。
エアリアルシルクとは、天井から吊るされた長い布を使って、地上から何メートルも離れた場所で空中アクロバットを行うダンスの一分野です。
彼女はなぜロープアクセスの資格を取得しようとしているのでしょうか。「以前、この演目でトラウマになるような事故を目の当たりにしたことがあるからです」と説明するミリアムは、自分の仕事に内在する危険を認識しています。「今後は、自分で安全を確認していない設備や、特定のルールに基づいて設置されていない設備に、自分の命を預けたくないのです」

newsfr_photo2_cordistesaufemininプロフェッショナルが行う正しい方法でロープアクセスを学ぶ

日常的に高所で過ごすことが多いものの、ロープアクセスのプロフェッショナルになることは、ロープの登高やアンカーの設置、チロリアンブリッジの設置等に精通していないミリアムにとって、技術的な聖杯です。

newsfr_photo7_cordistesaufeminin受講生はそれぞれの作業場で、チロリアンブリッジを設置するための技術を学びます。

100 キロの荷重を引き上げる際、問題を解決するのは上腕二頭筋ではなく、チームワークと安全を第一に考えた適切なツールと技術の導入だとエルベは主張します。この職業を学べたことを誇りに思う若い受講生たちは、このような価値観を将来の職場、おそらくは高い所に持っていくことになるでしょう。