SRT で効率的に樹幹へ戻る技術

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SRT で効率的に枝上を移動するために、DdRT の長所であるメカニカルアドバンテージの効果を SRT でも活用できる複数の技術があります。

警告

  • • この技術情報を参照する前に、関連する製品の取扱説明書をよく読んでください。ここにある補足情報を理解するには、まず取扱説明書に掲載されている情報を読み、理解する必要があります
  • • ここで紹介する技術を身に付けるためには適切なトレーニングが必要です。ここで紹介する技術を実践する前に必ず、1人で安全に行う能力があることを上級者に確認してください
  • • ユーザーの活動に関連した技術例も紹介しています。ここに紹介されていない方法もあります

 
備考: この資料で『ジグザグ』は、『ジグザグ』と『ジグザグ プラス』の両方を指します。

原理は、作業者が体重を預けているロープ上に、ロープを折り返すための支点を一時的に設けてロープを引けるようにすることです。

1. 末端側ロープを使用した推奨技術

長所

  • 確保システムに変更が生じない: ロープクランプを折り返し用支点として使用することは作業者の安全に影響を与えません
  • システムが2:1メカニカルアドバンテージシステムに切り替わる
  • 折り返されたロープが作業者の前にあり、1回あたりに引けるロープの長さに制限がないため、樹幹へ戻る動作がより効率的に行える
  • ロープに体重をかけたまま、どのタイミングでもこのシステムをセットできる

短所

  • 作業中、末端側ロープが身体から離れないようにする必要がある (例: ハーネスに取り付けた『キャリツール』に通しておく等)。末端側ロープが作業者から離れると、メカニカルアドバンテージシステムは使用できなくなります (作業者を危険にはさらしません)

その他の方法

折り返し用支点は『ベーシック』+『ロールクリップ』でセット可能です。但し、作業が終わったら折り返し用支点を回収するためにそこまで戻る必要があります。

『リング オープン』+『ロールクリップ』または『リング L』+『ロールクリップ』を使用して、回収可能な折り返し用支点をセット可能です。この場合、『リング』はフリクションのみで位置を保ちます: 折り返し用支点はロープが張られている間はその位置を維持し、ロープにたるみができると回収可能になります。

固定のオプション:

回収のオプション:


11.5 – 13mm ロープで『ベーシック』を使用する際の留意事項:ベーシックは径 11mm までのロープで使用するようにデザインされています: 『ジグザグ』と使用可能なロープには対応しません。径の太いロープを器具にセットするのは困難です。

ロック機能に問題がないことは確認されています。

『ベーシック』は径の太いロープではスムーズにスライドしません。これが器具の主な使用目的であるロープ登高において 11mm より径の太いロープで使用できない理由です。ここでの使用では、『ベーシック』をロープ上でスライドさせる必要がないため使用可能です。

作業効率を上げるには、径 13mm までのロープで使用可能な『アッセンション』を使用してください。

 


2.『ジグザグ』でリダイレクトをする、使用が許容される技術

ユーザー間で使用が見られるこの技術は特別な注意が必要です。


注意: この技術はメインの確保システムを変更する必要があります: 折り返し用支点に使用するロープクランプがシステム全体の支点になります。ロープクランプに問題が生じると、墜落につながる可能性があります (ロープクランプのセーフティキャッチが枝と擦れる、ロープクランプまたは『ロールクリップ』のセットが不適切、 5kN を上回る荷重 (ロープによって異なる) により『ベーシック』がロープの外皮を切断するリスク等)。

長所

  • システムが 3:1 メカニカルアドバンテージシステムに切り替わる

短所

  • システムを設定する際、『ジグザグ』と支点の間の荷重を抜いて『シケイン』を取り外す必要があるため、作業者は自己確保をとらなければなりません。そのため、どこでもシステムを設定できるわけではありません
  • 作業者が引けるロープは『ジグザグ』から出ている末端側のロープだけのため、1回あたりに引けるロープの長さが限られ、樹幹へ戻る動作が効率的に行えません (調節型のアタッチメントブリッジを使用して、樹幹へ戻る際に『ジグザグ』 の位置を身体から離せば、DdRT の際と同様になり、この短所は改善されます)

備考

この技術では、『回収のオプション』の設定は『リング オープン』がロープ上でスリップするリスクがある (リングがロープ上でロックする機能が、ロープの径や状態、リングの摩耗状態等によるため不確実) ため推奨しません。このシステムは、『リング オープン』、『ロールクリップ』、『フロウ』の各新品を使用して、荷重 4kNに至るまでスリップさせずにゆっくり引く試験を行っています。尚、落下試験は行っていません。


注意: 『シケイン』を『ジグザグ』のフリクションチェーンとロープの折り返し用支点の間に残さないでください。『シケイン』 のハンドルが『ジグザグ』のリリースレバーを押さえ、墜落につながる重大なリスクがあります。

                                
                                
                                
                                
                                


3.『シケイン』を折り返し用支点として使用する推奨されない技術

ユーザー間で使用が見られる『シケイン』を使用したこの技術を行うことは推奨しません。

作業者は、着脱可能なスクリュー式の1本のピン (『シケイン』の上側の摩擦ピン) にシステム全体の安全を委ねることになります。このピンはアタッチメントポイントとしての試験も認証も受けていません。少しの不具合が危険な墜落に繋がる可能性があります。

更に、 このような使用のためにデザインされていない『シケイン』のプラスチック製ボタンが破損するリスクがあります (保証の対象外)。