アスリートの装備 – 佐藤裕介

佐藤裕介は「登る」という行為を楽しむスペシャリストとして、あらゆる分野で活躍し、国内外での幅広い活動が高く評価されているクライマーです。彼の激しいクライミングを支える装備はどのようなものなのか。また、装備を選ぶポイントや、使用にあたってのちょっとした工夫などについて、ある日マルチピッチに出かけるザックの中身を広げてもらい、話を聞いてみた。

2015年7月30日

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1. バグ バックパック:日帰りのマルチピッチに最適な大きさ。入りきらないギアは一時的に表のデイジーチェーンにかけられる。背負っていてもチョークバックに干渉せず、チョークアップがしやすいのもポイント。生地はとても丈夫で、私のバグは度重なる荷揚げでボロボロになりながらも、まだしばらくは耐えてくれそう。

2. ヒューロンドス ハーネス:軽快さは圧倒的。2015年のマイナーチェンジで着け心地が格段に良くなり、ハンギングビレイの出てくるマルチピッチにも使いやすくなった。高難度で多くのハングドックが予想されるルートではサマを選択する時もあるが、ショートルートからアルパインまで、たいていのクライミングはこれひとつでこなしている。

3.帽子 一日中、日射にさらされる日当たりの良い壁には持参する。つばが短い物がクライミングには使いやすい。折りたためるとなお良い。

4. シロッコ ヘルメット:一度かぶったら他のヘルメットには戻れません。軽快すぎてつけていることを忘れるほど。

5. ボルタ 9.2mm ロープ:マルチピッチでは長いピッチが出てくることも多く、ロープの引きの軽さを考えて細めの物を選択することが多い。ルートにあった長さで耐久性と柔軟性のあるロープを持参。

6. クライミングシューズ ロングルートやマルチピッチの継続では、本気シューズと大きめのシューズ(優しいピッチ用)の2足を持参する。長時間のクライミングになると足皮の痛さは大問題なのだ。軽量化優先のマルチピッチ継続では、アプローチシューズを削って瑞牆の駐車場から大きいクライミングシューズを履いて出発することもある!?

7. コーデックス ビレイグローブ:ビレイ時のグローブ装着は今では当たり前になりつつあるが、マルチでは特に重要。ロングフォールや浮石による不意の墜落がマルチでは起こりうるのでグローブは必ず装着する。

8. 防寒着 瑞牆のマルチなら夏でも薄いウインドブレーカーをハーネスにぶら下げることが多い。壁は上部に行くほどに風が吹き抜け、思っていた以上に冷えることが多い。寒い時期は、ビレイジャケットなどを追加する。

9. カム ギア ルートに合わせて各種カムを持参

10. フィナノー スリング:超軽量ダイニーマスリングを使用している。フィナノーは細さと軽さに加え、しなやかで使いやすい。

11. アンジュフィネス クイックドロー:カラビナは重量とクリッピング性能のバランスが良いアンジュLをメインに使用。

12. ルベルソ ビレイデバイス:リードのビレイにもフォローのビレイや懸垂下降にも軽量なルベルソ4ひとつで対応可能。高難度のマルチピッチには グリグリをチームで1つ持参することもある。

13. マイクロトラクション プーリー:難しいピッチでは、リード時にバックロープを引きバクを荷上げする。複数回の荷上げがあるなら軽量でボールベアリング内蔵のマイクロトラクション(85g)を携行した方が効率が良い。

14. ティカRXP ヘッドランプ:夜間行動を想定しているなら、明るいティカRXPがお気に入り。自動照射(リアクティブライティング)はクライミング時も有効で、登っているときの手元足元からルートファインディングには遠距離まで自動で明るさを調整してくれるので便利。

15. イーライト ヘッドランプ:夜間行動を想定していないなら、27gのイーライトをポケットに忍ばせる。

16. テーピング エマージェンシーキットは、取り付きに置いていく。壁の中にはテーピングを1巻き。

17. 食料 ルートに取り付いてからは、エナジーバーやジェルなどコンパクトで素早く食べられる物を持参。持参できる量には限りがあるので、取り付きでたくさん食べてゴーアップするようにしている。

18. サカポーチ チョークバック:マルチピッチには大量のチョークを詰め込んでおくと後で後悔しない。ブラシも必携ギア。再登の稀なルートではブラシを口にくわえて掃除しながら登ることもある。

19. 水筒 ハイドレーションタイプを使用することが多い。水筒を落とすこともなく、ハンギング時でも気軽に水分補給ができる。

20. バックロープ バックロープは細めのダイニーマロープを使用している。軽くて伸びがないので荷揚げも快適。

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