アスリートの装備 – 奥村優

滋賀にあるクライミングジム KO-WALL の一人息子として生まれ、クライマーとして育った奥村優は、小学生で 5.14a、高校生のうちに 5.15a を登った。高校を卒業し「フルタイム」クライマーになるとほぼ同時にコロナ禍に見舞われた彼にとって、この2年間は当初思い描いていたようなクライミングライフとは異なるものだっただろう。そんな中でも 2021 年末には御前岩の「Maturity 9a+/5.15a」を第二登するなど、国内で成果を残してきた。2021 年 12 月、アスリートミーティングで安間佐千とともに野猿谷を訪れた際、近況と愛用する装備について話を聞いた。

2022 年 3 月 10 日yu-okumura_futagoyama_climbing01

コロナ禍で

高校を卒業してからは、結構自由にさせてもらっていて、自分のクライミングを中心にのびのびやらせてもらっている感じです。コロナがなければ、多分今の自分よりは弱くなっていたと思います。コロナのおかげで、ジムでトレーニングができていて、ポジティブに取り組めていると思います。だいたい週4日登って、時々筋トレもやっています。完全なレストはジムで働く日とかですかね。最近はどこに行っても人が多いので、岩場には平日に行くことが多いですね。良い循環ができています。仮にコロナがなければ、海外遠征に行っていたとは思いますが…。

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岩場に行く時は、1週間くらいの期間で関東に行ったり、あとはボルダーに行ったり。ボルダーは四国、岐阜、瑞牆、小川山がほとんどで、岐阜だったら日帰り、あとは2、3日くらいですね。そういうのが週に1回とか。最近は岩に行く回数が結構多いですね。一日の過ごし方も、今まではそのエリアで自分が気になる課題をババっといくつか登る感じでしたが、「難しい課題もやってみよう」ということで、1つの課題を狙って行くことも多くなりました。その方がやはり難しいのは登れますね。

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トレーニング

毎年のように行っていた海外遠征に行けないので、ここ2年くらいは計画を立てて本格的にトレーニングに取り組んでいます。ジムでの分量はリードとボルダーが半々くらいです。自分のクライミングの中では、ボルダーよりリードの比重が大きいと思います。リードの方がやっぱり練習しないといけない感じがあって、そうなると自然にリードが多くなります。ボルダーは総合力ではなく、保持力とか持っている強さで決まる部分が多いと思うので、より総合力が必要なリードのトレーニングが多くなる感じです。リードの方が伸びしろがあって、もうちょっと頑張れると感じますし、「今やらないとヤバいかな」と。リードはトレーニングの量が必要で、今はそのための時間があるので。

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ジムばかりでもダメなので、岩場にも行きます。どちらかというと岩場を中心に登っているクライマーではなく、コンペクライマーのようなトレーニングだと思います。内容は自分で組み立てました。父に教えてもらったことをベースにしながら、細部は自分で考えて決めています。周りに強い人が多くいるので、そういう人がやっているトレーニングを取り入れたりもしています。特定の課題のためのトレーニングは行わず、持久力やフィジカルを底上げしたいと思っています。上手くなっているというか、強くなっている感じがします。特定の課題のために、一時的に強くなっても仕方がないので、全体的に強くなって、それを維持したいと考えています。V16 や V17 になったらやらないといけないと思いますが、今はそれよりも全体的に強くなりたいという感じです。

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これからの遠征先

今一番行きたいのはセユーズですかね。「バイオグラフィー」をやりたいです。すでに触ってはいて、ワンテンまではいったのですが…。なので、リードならセユーズやオリアナ、ボルダーならロックランズやコロラドも行きたいですね。

リードでの装備

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1. タープ・ロープタープ:ロープを結ぶ箇所が色分けされているので、末端を見分けるのに便利です。
※ロープタープは⑰『クリフ』バックパックに付属

2. ボルタ 9.2 mm・ロープ:国内のスポートルートに行く時はこれの 60m を使っています。

3. スピリット エクスプレス・クイックドロー:クリップがしやすくある程度軽いので、これをメインに使っています。スリングが適度にしなやかなので、ねじれても戻る良さがあります。

4.グリグリ・ビレイデバイス:基本スポートしかしないので、これを使うことが多いですね。マルチで持って行くこともあります。中学生になるぐらいからずっとこれなので、安心してビレイできます。

5.ルベルソ・ビレイデバイス:マルチピッチ、トラッド、ジムのスクールで子供をビレイする時に使います。支点にかかる衝撃荷重を考慮してトラッドの時は必ずルベルソにしています。カラビナはアタッシュです。

6. クライミングシューズ:複数のモデルを使い分けています。つま先勝負の時やリードの時は主にスポルティバの『スクワマ』ですが、ヒールを掛けやすいようにかかとの部分をカスタマイズしています。ボルダーの時はスポルティバの『スクワマ』『ソリューション』、スカルパの『インスティンクト VS ウィメンズ』、アンパラレルの『レグルス』の4足を使っています。

7. コーデックス・グローブ:寒いと手袋をしますが、夏は素手のこともあります。手がぬめりやすいので、チョークアップしながらビレイすることも…。

8. サカ・チョークバック:他に物を入れたりはしないので、シンプルで軽いモデルが良いですね。小さいブラシを常に付けています。手が入れやすいし深さが適度なので素早くチョークアップできます。

9. サマ・ハーネス:今メインで使っているハーネスです。もっと軽いハーネスもありますが、丈夫さ、安心感、包まれているようなフィット感が良いですね。

10. フィンガーボード:パチ(ウソビアガ)が出しているものを買ったのですが、1本指を足したりして自分で使いやすいように作り変えています。リードだけでなくボルダーでもよく使っています。

11. ビンディ・ヘッドランプ:暗い中で登る時は、軽くてコンパクトなのに明るい『ビンディ』を使います。USB 充電できるので、ポケットに入れておくとキャンプの時も便利です。

12. アクティック・ヘッドランプ:アプローチが長い場合など、より明るさと照射時間が欲しいときは『アクティック』を使います。バッテリーには USB 充電ができる『コア』を使っています。

13. 指ケア用セット:手指の止血用にニチバンのテーピング、乾燥を抑えるための G-FREAK のクリーム、やすり、かみそりを持っていきます。
※G-FREAK は奥村が働くクライミングジム「KO-WALL」のオリジナルブランド

14. パワーリキッド・液体チョーク:手に長く残ってくれるので、リードや長いボルダーはこれを使っています。

15. G-FREAK の液体チョーク:松脂不使用の液体チョークです。手のコンディションを整えたい時はこれを使います。カチ課題もこれですね。アルコール度数が高くほとんどエタノールなので、手の油分を取ってとても乾燥するので、コンディション勝負の時やボルダーはこれです。

16. G-FREAK のチョーク:細かい系ではなくちょっと粗く、手にしっかり残るチョークです。コスパが良い (200g で 550円)のもウリですね。

17. クリフ・バックパック:アプローチが長い時は別のザックを使っていますが、それ以外はこれを使っています。

18. 行動食:その日の気分でポテチの時もあるし、エナジーバーの時もあります。「POW BAR」は1本で一日過ごせるので、オススメです。これだけあれば最低限足りるので、難しいのに挑戦するときはこれを持って行きます。食べ過ぎると眠くなっちゃうので。飲み物はだいたい水です。

19. 焼き石セット:冬の寒い時には手を温めるために持って行きます。ストーブ、石を置いて焼くための道具、あとはサンタリーニャで拾ったマイ石です。

20. マグマ・カイロ:焼き石の代わりにカイロを使う時もあります。