アスリートの装備 – ファビアン・ブール

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ドイツ南部出身のクライマー、ファビアン・ブールはオールラウンドに活動するクライマーだ。ボルダラーとして名を馳せたものの、半年に二度同じ足首を骨折し、「歩いても良いが3週間は飛び降りてはいけない」と宣告された。これを契機としてトラッドクライミングを学び、Prinzip Hoffnung 8b/8b+ を登った。それ以来、ファビアンは狂ったように登り続けている。ボルダリングは今でもするが、それにアルプスやパキスタンでのアルパインクライミング、ソロでのビッグウォールフリー、ハードなトラッドクライミング、アイス、ミックスクライミングを加えている。今回、残雪期のマウンテニアリングにおいて、「ライト & ファスト」スタイルでありながら、あらゆる状況に対応できるような装備について、少しだけその中身を見せてもらった。

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「大のギア好きです」。ペツルが製作するプロトタイプをテストし、フィードバックを与える立場にいることを、とても嬉しく、また誇りに思っています。完璧なものを創造するため、細々したディテールまで改善したいと思っており、ものが良いというだけでは決して満足しません。

ここでは、特別難しくはないものの、いくらかのギアを必要とするようなルートに持って行く装備について、ご紹介します。残雪期の山は簡単なルートでさえ時に奮闘的になるので、効率良く楽しむことができます。重荷を背負いたくないので、持ち運ぶギアには効率性を重視します。「ライト & ファスト」スタイルでのマウンテニアリングではパッキングが重要な役割を果たしますが、必要なものだけを持ち運ぶには、ギアの理解と信頼が欠かせません。手持ちのギアでほとんどの状況に対応できることに確信を持つ必要があります。これらの装備であまりテクニカルでない場面のほとんどに対処できるため、幅広いルートを登ることができます。

1. ボルタ ガイド・ロープ: 重量と安全性のバランスが良いので、このロープがとても気に入っています。シングルロープとして多くの場面で使用します。このロープは表面のコーティングにより、春の湿った雪で使用しても軽量性を損ないません。柔らかい操作感とメートルあたりの軽さが最高です。

2. レーザー スピード ライト・アイススクリュー (13 cm x 2本、21 cm x 1本):『レーザー スピード ライト』はアイススクリューのデザインが進化した証であり、イノベーションにより大幅に軽量な製品が作れるということを示しています。私はいつも短いものを2本と、V字スレッドを作れるように長いものを1本持っています。

3. イルビス ハイブリッド・クランポン:これが無ければほんの少しの氷や雪で敗退することになるので、クランポンは不可欠です。『イルビス ハイブリッド』は様々な状況で数多く登る際に、信頼の置けるクランポンです。最大の利点は、非常に軽量で不要な時には簡単にザックに収納できることです。

4. シロッコ・ヘルメット:春に比較的簡単なルートを登る際は、融雪に伴う落石のおそれがあるため、ヘルメットがとりわけ重要です。『シロッコ』は素晴らしく、かぶっていることを感じさせません。時としてクライミングが終わって車に着く時になってはじめて、まだヘルメットをかぶっていたことに気づくことがあります。つまり、このヘルメットは本当に快適性が高いということです。

5. ガリー・アイスアックス:『ガリー』は私にとってとても革新的な道具です。短く軽量ながら、鋭利でテクニカルなピックによりあらゆるタイプの氷で高い性能を発揮します。私はほとんどのアルパイン、ミックスクライミングでこのアックスを必要としています。春に、どれくらいの雪や氷があるかわからない時に携行するのに最適です。ミックスクライミングのピッチや、プロテクションを取るのにクラックを掃除する際に役立ちます。

6. マルチフック:軽量で汎用性が高く、アイススクリューの内側をクリーニングしたり、V字スレッドにコードやロープを通しやすく作られており、大変気に入っています。

7. ピュラノー・スリング (60 cm x 2本、120 cm x 1本):スリング『ピュラノー』は、チョックストーンで支点をとったり、ロープドラッグを抑えるために支点を延長したりするのに最適です。簡単な長いルートにおいて、ロープドラッグは大敵です。

8. ルベルソ・ビレイデバイスとエスエムディ・カラビナ:自己確保やパートナーをビレイするために常に携行しています。『ルベルソ』は軽量なビレイ・懸垂下降用器具で、常に持ち歩いています。軽量な自動ロッキングシステムのカラビナが3つあれば十分で、操作性が高くとても気に入っています。

9. アンジュ フィネス・クイックドロー:既に完璧に近かった製品をさらに改善した好例と言えます。『アンジュ フィネス』は軽量でありながらとても快適な操作性をもつクイックドローです。この新しいダイニーマスリングは、増量せずに幅を広くすることで、つかみやすくなっています。たいていの場合、短いものを3本と長いものを4本携行しています。

10. シッタ・ハーネス:必要なものを全て備えていると同時に、軽量で快適性が高いということ以外には、あまり言及することがないですね。ほとんど全てのアクティビティでこのハーネスを使用しており、4つのギアループはギアを整理するのに最適です。キャリツールもたいてい1つ付けています。

11. タイブロック・アッセンダー:セルフレスキューやロープを引き上げる時のために、常に1つザックに入れています。軽量でとても汎用性が高く作られています。

12. ナッツ1セット:とても多用途かつ軽量なので、オフセットしたナッツを常にいくつか携行しています。安価なので、予期せずに懸垂下降をする必要が生じた際の支点に使います。

13. トーテムカム3個:カムは素早くビレイ点を構築したり、支点をとったりできるので、便利です。トーテムカムは少しフレアした箇所でもよく機能します。石灰岩では他のものよりもこれを選びます。たいていブラック (0.5)、イエロー (0.8)、グリーン (1.25) と幅広いサイズを持ちつつ、同時に重量を抑えるようにしています。

14. G5 La Sportiva・登山靴:山において、ほとんど全ての場面でお気に入りのブーツです。軽量かつとても快適で、履いている時はいつも自信を持てます。特に春で雪が溶けかけている時は、一日中乾いた足の状態で行動できるよう、できるだけ長時間水を寄せ付けないブーツが好みです。より簡単なルートでは、TX TOP 等のより軽量なものを使うこともあります。

15. Tycan Pro Adidas・サングラス:高所の強力な紫外線から目を守るため、また春の雪は特に良く光を反射するので、サングラスを常に携行しています。

16. Agravic Adidas・3レイヤージャケット:いつも軽量で通気性が高い防水ジャケットを持つようにしています。いつ必要になるかわかりませんし、常に身体を保護できるものを持っておくと安心できます。

17. グローブ

18. Skyrunn Adidas・パンツ:防水ハードシェルレイヤーよりも歩きやすく、登りやすいため、春はたいてい耐久性の高いソフトシェルパンツを履いています。

19. Rock’n Roll Deuter・バックパック:シンプルで軽量なバックパック背負うようにしています。上手にパッキングすれば余分なフォームパッドは必要ないので、その分軽量化できます。チムニー等の細い箇所で引っかからないように、細身で余計なもののついていないバックパックを好んでいます。細身のバックパックには、クライミング中にハーネスのギアループにアクセスしやすいというメリットもあります。

20. チーズ:エナジーバーは嫌いですが、チーズと生ハムは好物です。

21. Platypus 1L・ソフトボトルと Lyo・飲料:液体は大事で、筋肉がつらないようにして良いパフォーマンスを発揮するには、十分に水分を摂る必要があります。Lyo の新しい製法では、全て自然食で必要なエネルギーをそのまま提供してくれます。ソフトボトルはスペースを取らず、たいていどこにでも入ります。

22. Climb On・リップクリーム:唇はいつも Climb On のリップクリームで保護しています。食品並みに味の良いリップクリープです。唇が乾くと次の日にはひびが入るので、乾かないようにしています。

23. Sony RX 100 IV・カメラ:クライミング中に写真を撮るのが好きで、山で天気の良い日には良い写真を撮るのを楽しみにしています。

24. アクティック コア・ヘッドランプ:朝早くや夜中から動き出す場合に備えて、またクライミングに予定よりも時間がかかり日が暮れる場合を想定して、常にヘッドランプを携行しています。このヘッドランプは照射力と重量のバランスが最適です。